約 4,055,623 件
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1848.html
―――捨てられる 捨てられた人間 ―――彼らは悲しみ、苦しみ、嘆くしかないのでしょうか ―――いいえ、それはちがう ちがうと思う 壱 新暦六十九年 そこには雑音が満ちていた。 研究員たちの怒号、ざわめき、悲鳴。狼狽した無数の足音。金属のつぶれる音。 頑健に造られたはずの研究施設の構造材が倒壊し、その破片をぶちまける音。 そして、それらを焼き焦がす炎の音。 匂いが満ちていた。 嗅ぎなれた、眼を醒ますたびに希望なんて無いのだと自分を暗鬱にさせた薬品臭。 無機質で冷たい金属と壁の匂い。窓の無い部屋にこもったカビの匂い。 そして、それらを焼き焦がして燃えあがる炎の匂い。 彼は衰弱していた。弱り切っていた。 苛酷な扱いを受けた幼い身体は、もとが何とも知れない細長い金属の構材を杖にしてようやく歩を進めていた。 疲労と熱とで、全身から汗がふき出す。身体が金属の杖につかまったまま、くずおれる。 いっそこのまま冷たい床に横たわりたいと身体と心が悲鳴をあげている。 空間を満たす金属と薬品の焼ける刺激臭と黒煙に、思わず彼はむせ返った。 逃げ惑う研究員たちの誰も、彼を気にかけなかった。怪我を負っている者も大勢いた。 瓦礫の下から伸びる手の主などは、生きているか死んでいるかも彼には分からない。 暗く濁った瞳に浮かぶのは、いつのまにか生まれついてからの伴侶であるかのように染み付いた諦観と、この状況への困惑と怯え。 ―――そしてほんのわずかだが、確実に、泥のように沸く感情。喜悦。 それが口を突いて出る『ざまあみろ』と。 「ハハッ……いい気味だ」 音となった言霊は、力を持って彼の心を黒い喜びにひたした。 だがそれは、心をざらつかせた。 生まれて初めて感じた胸のすくような喜びと、それを上回る不快感。 彼の幼い精神はそれを持て余した。 だから、気づかなかった。すぐそばで、瓦礫に半身を埋もれさせている男に。 「チクショウ! なんでこんなことにっ!」 知っている男だった。研究と言って、散々に自分に痛苦を味あわせた研究員。 その声が激しく大きな語調で響くだけで、彼の小さな身体はすくみあがった。 逃げ出したかった、だが逃げ出すことすら怖かった。だから眼が合ってしまった。 「NP3228、なぜお前がここに……。いや、それより。助けてくれ」 すがるような視線。声。付近に研究員の仲間はいない。 自分をモルモットとして扱った男の無力で、無様なさま。 だが、幼い心に刻まれた恐怖は、強制力を働かせた。 杖を支えに立ち上がる。 気だるい身体を引きずるように歩を進める。 男に近づいた。男は自身の身の丈の倍ほどもある瓦礫にすっかり挟まれ身動きをとれずにいる。 持ち上げる。高く、高く。 ――――杖を。凶器と変じた金属の塊を。 「おい、、、やめろ。あんなに世話をしてやったってのに。この恩知らずが!」 世話。研究員たちは、この男は、実験動物を扱う以上の扱いを彼にしたことは無い。 死なぬように、モノのように、動物のように。ただそうしただけ。 燃えるように泥が沸く。幼い心はそれが殺意だとは理解できなかった。 ただ振りあげた手のなかの凶器に、己の魔力がなかば無意識に流れた。 彼の生まれ持った資質に従い、それは魔法術式を通すことなく電気へと、致死の雷撃へと変換された。 限界を超えて注ぎ込まれた魔力は、弾けるように空中放電を起こすそれは周囲の空気を焼いた。 血のにじむほどに握りしめた金属が熱を帯びている。 手のひらを焼く音がした。肉の焦げる匂いがした。 痛みを無視することには慣れてしまっていた。 いや、その痛みは自分のモノではないのだと、他人のモノだと、そう思うことに慣れていた。そうでなければ壊れていた。 そして威力をいや増す雷撃は先端に収束し、彼の殺意にふさわしい形を具現化した。 コロすための形―――槍の形。槍の穂先を。 「やめろ。殺すつもりか。この、できそこない、、、、デッドコピーめ!」 始め黒くにごり、次に血のように禍々しい赤い炎を宿した彼の心は、最後に白熱化した。 それを映すように、彼の槍もまた極限まで圧縮された雷撃を白い刃と成す。 空中にあふれた雷撃が抉るような物質的破壊力すらともなって、周囲の壁といわず床といわず、周囲の空間を荒れ狂う。 彼の心には、もう怒りも憎悪も、殺意もなかった。 ――――ただ振り下ろした。思い切り。 * * 彼は走っていた。 左右の手のひらがひどく痛む。 焼け爛れ、癒着した皮膚を無理やり引き剥がしたそれは絶えず血をにじませ、耐えがたい激痛を彼に送り続ける。 どこを目指しているかなどもうわからない。 立ち止まればくずおれて、もう二度とは立ち上がれないという恐怖にただ突き動かされる。 様々な思念が、彼の心の表層に浮かびかけては沈んでいく。 そして徐々に、なにも浮かばない虚ろとなっていく思考。 最後に、ふと残った思念があった。『星を見たい』。 最後にそれを見たのはいつだったか。時間の感覚も、記憶も、ひどく曖昧だ。 ただそれが希望だと、自分にそう思い込ませてとうに尽きた体力を振り絞る。 酸素不足にあえぐ脳は、眼は、すでに前を見ていない。 自分が今ぶつかったのは壁なのか、それとも床なのか、本当に自分は走っているのかさえわからなかった。 だがそれも限界。意識もなにかもが闇に溶けようとしていた。 そんなときに、ふと。感じたのだ。風を。 「あァ……」 それは何と言い表すべきか。 これは弾道だと、そう思った。 彼を閉じ込めていた研究施設。檻を。彼の心を縛りつけていた闇を。 全てをまっすぐに、まっすぐに貫いていた。風穴を開けていた。 直径で数メートルほどあろうかというその大きな大きな弾道は、床を砕き、天蓋を割り、ぶ厚い壁をも貫いて、空につながっていた。 ただきれいだと思った。そこからさしこむ光は、そこから見える空は、そこから見える瞬く星たちは。 「……きれいだ」 その星たちの中に、ひときわ強く、虹色に瞬く星があった。 普通の星ではない。流れ星だって、円弧を描くように空を旋廻したりはしない。 なにより七色の虹を無秩序に撹拌して凝縮したような、そんな異様なモザイクとなった強い強い光。 そんな光を灯す星は、自然にはありえない。 その虹色の流れ星が動きを止めた。眼が合った。いや、合ったと思った。そんな気がした。 次の瞬間、星が激しく瞬いた。 網膜を焼かんばかりに輝くそれを、しかし瞬きもせずに目に焼き付けた。 その虹色の輝きが最高潮に達した瞬間。 星が、疾走した。虹色の光を炸裂させ、それを推進力に変えて。 速い。本当に速い。眼で追うことは叶わなかった。知覚すらできなかった。 ただ、あの異様な虹色に輝く光の尾の軌跡だけが、星の瞬く空を我が物顔で。 まるで星空を二つに割るように鮮やかに描かれていた。 次に感じたのは衝撃。 それは大気を震わせ、大地を震わせた。繊細な皮膚や筋繊維などものともせず、内臓にまで重く響く衝撃。 その次に感じたのは風だ。 澱んでいた空気と、白煙黒煙、瓦礫までが空へと巻き上げられた。もちろん彼の身体も。何もかもが世界全てが吹き飛ばされたようにすら感じた。 最後にもう一度、衝撃。 宙を舞ったそのままに、半ば崩れた壁に叩きつけられていた。 不思議と、痛みは感じなかった。 ただ何故か、熱かった。心が振るえ、そこから力が溢れてくる感覚。 それは、心の奥底に焼きついたあの虹色の光から与えられたものだと感じた。 そう信じたかった。そう信じた。 ならば自分も、こんなところで這いつくばってなどいられない! 世界には、あんなにも見たことのないものが、あふれるほどにちらばっていると知ったのだ。 それに気付いたならば、もうこんな見飽きた場所にいる時間は一瞬でも惜しい。 行くんだ。速く。もっと速く! 溢れる心の熱が身体を突き動かす。 それは力となり、力はみなぎる魔力となり、それは魔法になった。 魔力による単純な肉体強化。れが彼を加速させる。もっともっと速くと。穿たれた弾道の中を駆ける。 それはいびつな破孔だ。とても歩ける場所など無い。足場など無い。 だがそれがどうしたと。駆ける。走る。 床だったもの、壁だったもの、天井だったもの。それらを蹴り飛ばし、重力にも囚われずに、縦横無尽に駆け抜けた。 もうそろそろ弾道の先、空へと達しようというとき。呼ぶ声が聞こえた。 聞き覚えの無い、困惑と焦燥を滲ませるまだ若いだろう女の声。 だが彼に聞く気はさらさら無い。さらに加速する。 呼び声の主は対応を変えたようだ。 呪文。いや、デバイスに圧縮された呪文の解放を命じる声だ。 金色に輝く魔力光が収束し、疾走する身体を捕らえるべくバインドを結実しようとしている。 捕まってたまるか。 最後の加速。彼は渾身の力で、撃ち抜かんばかりに最後の一歩を蹴った。 結実したバインドが虚空を掴む。 そして彼は弾道から、文字通りの弾丸のごとくに飛び出した。 その瞬間、閃光が左右に走った。閃光の中心が青白い半球となって膨れ上がる。 強烈な光球だ。直視できないほど。 研究施設はその閃光に呑み込まれ、間も無く原形を留めぬ大崩落を起こした。 彼は空中でその爆風に揉まれながらも歓喜の感情を噛み締める。 広い広い空へと。世界へと踊り出たのだ。 その事実に、無理な強化により酷使された身体の痛苦よりも、自分をつないだ牢獄同然の研究施設から解放されたことよりも。 まだ見ぬ世界への期待と渇望が心を満たした。胸が躍った。 そのときにはもう、彼を――彼にはあずかり知らぬ事だが――保護しようとして閃光に呑まれた相手のことなど頭の中から消えていた。 ――――そのすれちがいが、彼と彼女の初めての出会いだった。 ――――――そして彼は、暫くの後ある世界の片隅でもう一つの出会いを経験することとなった。 * * 弐 二年後 新暦七十二年 あそこを逃げ出してからどれぐらいが経ったのだろうと彼は考える。 昨日のような気もするし、十年以上の昔にも感じられた。十年前に彼は生まれてもいないが。 実際は三年にも満たない時間なのだが。 彼は今、荒涼とした大地のド真ん中にいた。 そこに停められた仕事上のパートナー――相棒――の車の中で、相棒のド-ナツを無断で頬張っていた。 今は仕事中で、かつ待機中だ。相棒からの合図はまだ無い。 要するに未だ幼い彼は暇を持て余していた。 「―――懐かしい味がするなぁこのドーナツ。 ドーナツ……ドーナツかぁ」 懐かしい味に記憶が刺激される。彼は眼をつぶり思案にふけった。 このまま何もせず待機していたのでは眠ってしまう。 「そういえば、そうだった。 あの日あのとき、あの雨の日。ボクは一人で生きていた。誰にも頼らず。 いや、頼る相手も無く、一人で、ずっと……。 そこに、現れたんだ。 あの人が」 * * 参 新暦七十年 研究施設を逃げ出してからしばらくの時間が過ぎた頃。 あてもなくさまよった何者でもない少年は、この荒涼とした世界に流れ着いていた。 日々を生きるのも厳しい、そんな世界の片隅に。 その男は前触れなく現れた。 赤いシューティンググラスに、コート、髪型。浮かべた笑顔まで。 そのどれもがどこか鋭角的なイメージを抱かせた。 「よぉ、坊主。一人でなにしてる? こんなところで食事かぁ? その男は少年の手元を覗き込み、さらに言葉を続けた。 「ドーナツか。うまそうだな」 「……ほ、欲しいの?」 男の言葉に幼い体が身構える。 少年の返したその言葉と防御体勢に対してさもおかしそうに笑うとこう言った。 「だとしたらァ、どうする?」 「欲しいなら、奪ってみろ。 体の大きいあなたにはかなわないかもしれないけど、ボクはこの食べ物を離さない!」 その勇ましい反応に、さらにおかしそうな顔をすると男は笑った。大声で。 「フフッ、ハッハッハッハッハッハッ! じょぉだんだよ。俺は物盗りなんかじゃねー」 「わかるもんか! そうやって優しい声をかけてくるやつに、何度も痛い目に合わされたんだ」 男は顔に笑みを張り付かせたままその抗弁に応えた。 馬鹿にされたのかと思うと面白くなかったが、その笑顔は不思議と不快には感じられなかった。 「痛いのも裏切りも、どこにでも転がってる。そういうもんだろ? その食いものをどうする? お前はどの道を選ぶ?」 「渡さない。三日ぶりの食事なんだ」 「だったらそうしろ。それでいいんだ。そういう気持ちでいいんだよ。 ―――坊主、お前の名前は?」 唐突で意外な問いに面食らった。自分が人間ではないと知らされて以来、人に名前を聞かれる それを顔に出すのもなにか悔しくて。精一杯の虚勢を張って答えた。 「坊主なんかじゃない。ボクの名前は、エリオだ」 「エルオか」 さらっと間違えた。『やっぱり嫌いだ、こんな人』。 「エリオです!」 「だから、エルオだろ?」 「エリオだって言ってるでしょ!?」 男は手をひらひらとさせてエリオを制する。 ますます愉快そうな顔をするものだから、エリオは面白いわけもなく。 きっと誰にもこんな調子なんだろうと、憤懣やるかたない思いが募る。 完全に乗せられている。 「わかったわかったぁ。ところで・・・ ―――そのドーナツ、うまそうだなァー」 「や、やっぱり狙ってるんじゃないですか!」 エリオは手のドーナツを庇うようまた度身構えるが、男はやはりそれに頓着しなかった。 人懐こい笑みを浮かべたままだ。 「知り合いだから、頼んでるんだよ」 本当にそれは、知り合いや友達に言うような軽い口調で。 それはとても懐かしいような、そんな感覚で。 だからだろうか、いつのまにかエリオは目の前の風変わりな男に気を置けなくなっていた。 「うー……、もう、しょうがないなぁ。 少しだけなら分けてあげます」 よく見れば、男も自分と同じぐらいにやつれていることに気付いた。 だから、つい、心を許してしまった。 同情とも共感ともしれぬ感覚から発せられたその言葉に対する男の反応は、ある意味でエリオの予想を大きく逸脱するものだった。 「助かる。実は俺も三日食ってないんだぁ……。 いやな、愛車に乗って気ままな一人旅を続けていた俺なんだがな 道中か弱い女性がアーレーなんて悲鳴をあげつついわゆるやられ役みたいな奴らに追われてたんで俺の中にある正義感がふつふつと湧き上がってきたしか弱い女性を助けるのは精神的にも肉体的にもお礼があるかなと思って最速で登場したわけだ! なんせ俺はGOODSPEEDだからな! それでやられ役の男たちが俺に向かってなにか言おうとしてきたんだが最速であることを信条としている俺は会話もせずに奴らを蹴り飛ばして女性を助けることに成功したのさァ! そしたらか弱い女性が俺にお礼を言ってCHUーの一つでもしてくれるかと思ったらいきなり怒り出してよ、よく聞いてみたらやられ役の男たちは彼女の使用人で鬼ごっこをして遊んでたらしいんだよ! おいおいそんな誤解を招くような遊びをしてるんじゃないと思ったけど愛と最速を信条としている俺はすぐさま誤って即座にトンズラしたわけだがその女性の兄貴がなんと魔導師でな! 仲間の魔導師を集めて追いかけてきたもんだからさァ大変! 食うや食わずの逃亡劇が始まって早三日! 嗚呼そんなこんなしてる途中で今ここにいる○×△□?!」 「あーーーーー!うるさぁーーーい!!」 それは、聞いているだけで頭痛がしてくるかのような言葉の洪水だった。 エリオはそれをなんとかせきとめた。 でなければどれだけ付き合わされるか分かったものじゃないと、そんな確信にも似た感覚があった。 きっとこういう反応が返ってくるのは初めてじゃないのだろう。愉快そうに手を叩いて男は謝罪を述べる。 「アッハッハッハッ! すまんすまん! 悪気は無かったんだ、エルオ」 「エリオです!!」 「あ~あァ~、すまんすまん!」 そのやりとりに男はやはりというべきか、さらに喜色を浮かべるばかりだった。 「あんたって人は・・・」 「あんたなんかじゃねぇ、俺は……おっと。悪い悪い、俺の方こそ名乗ってなかったな。 ―――俺の名前はな、ストレイト=クーガー。 ―――――――――――誰よりも速く走る男だ」 そう、どこか気取った調子で話したその男。 その出会いは。その名前は。その姿は。その在り方は。 エリオの幼い心に深く刻まれることになった。 * * 四 再び新暦七十三年 「ストレイト……クーガー……。 そうだ、そういう出会いだった」 自然と、笑みが浮かんでいることに気付いた。 彼の前ではけして口にしなかったが、尊敬していた。憧れていた。 だから、今の自分があるのはあの人のおかげだと、そう思えた。 そんなとき、相棒の奇妙なでどこか嬉しそうな奇声が聞こえた。 合図ではないが、餌―――よく言って囮。であるところの相棒に、獲物であるところの強盗がかかったのは間違いなさそうだ。 そして“一瞬”で相棒と獲物との間に割り込む。 その獲物に慌てた様子は無い。余裕も見て取れる。 手練れと見ていいだろう。 女性で、エリオから見ても美人の部類だった。 相棒が奇声を上げた理由はこれか。美人に眼が無い。 「あなた! そう、そこのあなたです! あなたですか? 最近この辺りに荒らしをかけているという魔導師は」 「そうだとしたら、どうするの? 坊や?」 大人な雰囲気に内心では少々気圧されながらも、精一杯にクールな虚勢を整えた。 「その人のおかげで、ボクの依頼人がお困りでしてね。人助けをすることにしたんです」 「ついでに報酬も頂く?」 「当然!」 「それじゃあ、あなたも魔導師なの?」 「そう思ってもらってかまいません。 さぁ、こちらの事情は話しました。あなたのここにいる訳を聞かせてください」 女性はほんの少し思案する様子を見せてから、多少神妙な調子で答えた。 「時空管理局が最近開拓したっていう街を目指してるの。 ほら。近頃、よそ者たちのせいで物騒になってきたでしょ? あそこはか弱い女子供を保護してくれるって聞いたから」 「―――なるほど。いかにも、もっともらしい理由ですね」 「どういう意味かしら?」 女の余裕は崩れない。きっとこのやりとりを楽しんでいるのだろう。 確かに方角はあっているし、夜の一人歩きも魔導師であると考えればそれほど問題ではない。 辻褄は合っている。 しかしエリオは、彼女がそうだと確信を深めていた。 この問答自体、彼の誠実さからくる一応の追認に過ぎない。 だから、精一杯に挑発的な笑みを相手に突きつけて。 「嘘はよくありませんよ?」 「あら、どうしてそう思うの?」 「どんなに嘘を隠そうとしても、どうしようもなく視線は動くものです。 ボクはそういう人たちをごまんと見てきた。 あなたは嘘をついている。 これは勘なんかじゃない、ボクの確信です」 「―――ふぅん。相当な手練れのようね?」 「―――まだ魔法を見せていないのに、ボクの力量を推し量るあなたも」 女性の纏う雰囲気が変質している。 まがりなりにも被っていた猫を脱ぎ捨てた、獰猛なそれに。 これじゃ猫どころか虎だ、とエリオはなんだかおかしな気分になった。 戦いの予感に、高揚している自分を意識する。 そんな二人の間にある危うい均衡を楽しむように、その虎であるところの女性は問いを発した。 「あなた、名前は?」 「エリオです」 「ああ」と女は声をあげる。「聞いたことがあるわ。確か、レアスキル持ちの雷撃使い」 「へぇ、ボクも有名になっちゃったな。 そうですね、そのエリオで間違いないと思います」 「若いとは聞いていたけれど、まさかこんなちっちゃくてかわいらしい坊やだったとはねぇ」 どこか人懐こい、そんなきれいな笑顔に見入りそうになる自分を叱咤して。 エリオは問いを返した。 「ボクのことは話しました。次はあなたのお話を聞かせてください」 「―――私? 私、私は……。そうね。私を倒せたら教えてあげる」 空間に魔力の流れを感じる。 リンカーコアが周囲の空間に漂う魔力を吸い上げているのだ。 この世界の魔力は濃い。 生まれついて強力な魔導師が多いのと、それは無関係ではないだろう。 エリオが応戦のための魔力結合と変換を開始しようとしたそのとき――――横槍が入った。 エリオの相棒―――いや、単なる仕事上のパートナーだ。と内心で訂正する。 「待て待て待てぇ! エリオ、そいつが例の荒らしなのかぁ?」 「は、はい。そうみたいですけど……危ないから下がっててください!」 間に割って入ろうとする男をエリオは手で制止しようとするが、男はまるで気にした様子は無かった。 「でもよぉ、お前みたいな強い魔導師の相手をしたんじゃあその綺麗なお姉さんがただじゃすまねぇ! エリオ! ここは俺に任せろ!」 サムズアップしながら彼の言ったことは、なんというか、少年の予想の斜め上だった。 「え、えぇえェ!? で、でも、キリシマさんは魔法なんて使えないんじゃ?」 この世界なら裏ルートを当たれば、魔導師としての才能が無い彼でも扱える質量兵器が手に入ることは知っていた。 実際、彼が銃型のそれをいくつか持っていることも知っている。 知っていたが、それは極めて原始的なもので魔導師相手に通用するとはエリオには思えなかった。 だがその男―――キリシマは軽い調子で続けた。 その顔は下心丸出しだった。鼻の下がこれでもかと伸びている。 正直エリオは大人に幻滅しそうになった。 「なぁに、お兄さんのやり方を見てなさい。そして思う存分目上の人間を敬うがいい~!」 「あら、あなたが相手をしてくれるの? 私はどちらでもいいわよぉ♪」 「はぁーい綺麗なお姉さぁーん! それじゃ男キリシマいっきま~っす♪」 そんな調子で彼女に大きく飛び上がって飛びかかっていくものだから、「あれじゃただの変態だよ……」エリオは頭を抱えそうになった。 彼らのそんな様子にはかまわず、女性魔導師であるところの彼女は、長杖型のストレージ・デバイスを構えた。 魔力によって編まれる防護装備――バリアジャケット――と環状の魔方陣が一瞬で展開される。 ミッドチルダ式の使い手だ。 「さぁ、かかってらっしゃい。これが私の魔法。 ―――シュート!」 複数が展開された環状の魔方陣。強い輝光を放つそれら全てから、同時に魔力弾が放たれる。 その射出数。速度。魔力量。集束率。誘導の正確さ。そして判断と思い切りの良さ。 その全てが彼女がこの無法の荒野の魔導師にふさわしい技量の持ち主であることを示している。 男キリシマがそれに対抗するする術は――――あるわきゃ無かった。 全弾を綺麗に直撃された彼は心持ち黒焦げになって吹っ飛ばされた。 「どぅわぁああああーーーー!!」 「だ、大丈夫ですかっ!?」 吹き飛ばされ、ゴミクズのようになった彼の元にエリオは駆けつける。 ―――黒焦げになった男キリシマは、なんというか、幸せそうな、満ち足りたような顔をしていた。 すごくたるみきったなさけない顔だ。 今度こそエリオは大人に幻滅した。 「すまねぇ、どじっちまった……。 き、気を付けろエリオォ。あの女、噂どおりすげぇ魔導師だっぜ……ゴホッ」 「わかってるなら行かないでくださいよ!?」 「期待しちまったんだよぉぉ!」 「何を!?」 「薔薇色をぉ」 「あなた絶対バカでしょう!?」 しかしキリシマはそんな、ハンカチを噛み締めているような表情から、急に神妙で真面目な表情を見せた それを見て性根から生真面目なエリオはハッとして、もしかしたら彼は自分に彼女の魔法を見せるためにわざと囮になったのかもしれないと。 揉まれてなお純粋な部分を多く残す少年エリオの脳裏にはそういった考えが浮かんだ。 キリシマは息を絞り出すようにしてエリオに語りかける。 彼の身体から力が抜けているのに気付いたエリオは顔を青褪めさせる。 「エ、エリオォ。頼む、俺のかた……かた…きを……うぐぁっ!ガクッ」 「キ、キリシマさん……。キリシマさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」 空に荒野に、エリオの慟哭が響き渡る。 だが。 キリシマはケロっと再度顔を上げた。 「ハーイ♪ 生きてマース☆」 「わかってますよ!!!」 放たれた射撃魔法はきっちり非殺傷設定だった。 しばらくは指一本ろくに動かせないだろうが、間違っても死ぬことはない。 魔導師でもない相手を殺すのは気が引けたのか。いや、ただ単に彼女もあきれたのかもしれない。 そんなキリシマの様子にあきれ半分で―――もう半分ではこっそりと安堵して―――彼を土の地面に放り出す。 ゴツゴツとした石の覗く地面に投げ出されたキリシマはカエルのような悲鳴を上げるが、エリオは今度はまったく同情しなかった。 「あーもうっ! しょうがないな! やられるくらいなら行かないでくださいよ!」 そしてやっと女性魔導師に向き直る。 どうやら待ってくれていたようで、愉快そうな顔をしてこちらを見ている。 あのバカっぽいやりとりをずっと見られていたのかと思うと、エリオは顔を真っ赤にした。 「あらぁ、かわいい。それで、次はあなたが相手をしてくれるの?」 「……ええ、そうなりますね」 「私の魔法の威力は見たはずよね?」 「ええ、見ました。かなりのものです。でも。 ―――そういうぶ厚い壁を見るとどうにも打ち砕きたくなるんですよ!」 魔力を雷に変換し全身に纏う。さらに呪文を唱える。我流の自己ブースト。 ブーストの加護を受け最高速度で肉薄し直接雷撃を相手に叩き込む近接格闘型。 それが彼のスタイルだった。 「いいわ。それじゃあ相手をしてあげる。さぁ、かかってらっしゃい! 坊や!」 「ええ、かかります! 当然そうしますとも! ――――行きます!!」 片膝を屈してしゃがみこむ。クラウチングスタートの要領だ。 四肢で大地を掴まえる、獣の戦闘体勢のような姿。 腰を突き上げ、それが静止する。 周囲の空間から吸い上げた魔力と、彼自身の魔力とが身体の内側で荒れ狂う。 それら全てを雷撃に変換し、限界よ超えろとばかりにエリオの小さな身体にそれが圧縮される。 身体からこぼれて荒れ狂い大地を舐め焼く雷撃の余波はまるで無数の電気の蛇だ。 そして唱える。 呪文ではなく、彼に速さを与える覚悟の言葉。尊敬するあの人から伝授された技。 相手を打ち倒すという決意の具現。 それに応えて彼の背中で極限まで圧縮された雷撃が解放され爆発的な推進力へと変換された。 「受けろよ! ボクの速さを!」 荒ぶる雷光の尾を曳いて。その身に宿す雷を拳に乗せる愚直なまでの一点突破。 「衝撃のォォォォッ!ファァーストブリットォォォォォォォォォォォ!!」 ――――それが荒涼とした大地が広がるばかりの世界にたどりついた彼の見つけた在り方。 彼の人生を変えた出会いがあった。 出会った一人の男に教えられた。生き方。戦い方。そして走り方。 そして、それからさらにしばらくの後に。 彼は再び彼の人生に大きな影響を与える出会いをすることとなる。 ―――強く、だがどこか脆く儚い。そんな光を宿した瞳と月に照らされ光輝く金色の髪を持つ女性と――― 魔法少女リリカルなのはGoodSpeed...Chapter1 Erio ...End To Be Continued... - 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2280.html
機動六課司令室は緊迫した空気に包まれていた。 オペレーター達から絶え間なく送られてくる報告の一つ一つを整理し、最も的確と思われる指示を返しながら、グリフィスは額の汗を拭った。 隣のリインフォースⅡも、食い入るようにモニターを凝視している。 傍らの椅子、部隊の最高責任者の座るべき席は空――本来は司令官代理のグリフィスが座るべきなのだろうが、本人は律儀にも立ったまま己の仕事を行っていた。 モニターに映し出される二つの映像――その片方は、輸送ヘリから送られてくる、山間で展開されるなのは達の作戦状況である。 進行状況は極めて良好――ベテランの隊長陣三人が制空権の確保し、経験の浅い新人四人は列車の中に突入し、魔導機械の殲滅している。 順調、文句のつけようもない程順調に作戦は進んでいる――こちらの方は。 問題は……グリフィスはもう一つの映像へと視線を移した。 炎上する市街地、数えることも馬鹿らしい程の量のムガン相手に孤軍奮闘するはやてとフェイトの姿――軌道上の通信衛星から送られてくる、ベルか自治領の様子である。 限定解除した二人の隊長級魔導師は、絶望的な物量差をものともしない圧倒的な攻撃力を惜しみなく振るい、驚異的な勢いでムガンを殲滅している。 しかし大技の連発は体力魔力両面での急激な消耗を招き、ペース配分を無視した無茶な戦い方は必ず破綻を迎えるだろう。 長くは保たない……歯噛みするグリフィスの拳は固く握り込まれ、爪が掌の皮膚に食い込む。 無論、何もせずにただ傍観者に徹する程グリフィスは無能ではない。 機動六課の戦闘要員はなのは達正規部隊だけではない、交替部隊――前線部隊の人員が何らかの理由で不在の際、その穴を埋める人員も用意されている。 ベルカ自治領での戦況報告を受けたグリフィスは、直ちに交替部隊の出撃を命じた。 本来は前衛メンバーのオフシフト時の待機要員としての意味合いが強い交替部隊であるが、正規部隊と同時に出撃させてはならないという規定は無い。 しかし元々正規部隊が到着するまでの時間稼ぎを主目的とした代替戦力、この想定外とも言える敵の物量を相手にどこまで通用するか、不安は残る。 更にそれ以前の問題として――決して考えたくない事態ではあるが――果たして交替部隊が到着するまでの間、はやて達二人は持ち堪えられるのだろうか。 あの二人の実力を疑う訳ではないが、それでも頭に浮かぶ最悪の可能性をグリフィスは否定することが出来なかった。 隣でモニターを見つめていたリインフォースⅡが、突如グリフィス達に背中を向け、まるで逃げ出すように司令室を退出した。 すれ違いざまにグリフィスの目に飛び込んだリインフォースⅡの横顔は、大粒の涙で濡れていた。 「リイン曹長!?」 「放っておけ」 声を上げるシャリオを片手で制し、グリフィスはモニターに視線を戻した。 気持ちは解る……絶望的な状況に陥るはやて達を見て泣き出したい気持ちは、目を逸らし逃げ出したい気持ちはグリフィスも、否、この場の全員が同じだった。 しかしグリフィスには泣き出すことも、逃げ出すことも許されない――何より自分自身が、そのような無様を許せない。 将とは如何なる時も冷静に、そして気丈に振舞わなければならない。 指揮官の動揺は部下の混乱に直結し、そして部隊そのものを瓦解させる。 あくまで冷静に、気丈に、そして普段通りに――それが指揮官としてこの場に立つ、グリフィスの義務なのである。 しかし……リインフォースの消えた自動扉を振り返り、グリフィスはふと思い直す。 放っておけとはいったものの、やはりこのままでは些か後味が悪い……。 「シャーリー」 コンソール操作に戻るシャリオの背中に、グリフィスは遠慮がちに声をかけた。 「やっぱり……リインさんを追いかけてあげてくれないかな?」 冷静に、しかし冷徹はなりきれない自分は、指揮官としては落第かもしれない……甘さを捨てられぬ自分自身に、グリフィスは胸の奥で自嘲する。 司令官代理として「命令」するのではなく、ただのグリフィス・ロウランの顔で「お願い」した幼馴染に、シャリオは親指を立てて了承した。 モニターの中で、なのは達は無事に任務を達成し、はやて達は相変わらず危うい戦いを続けていた。 「……ぅ、うぅ……」 廊下の片隅で小さな嗚咽の声が響いている。 司令室から――モニターの向こうで苦戦するはやてと、状況の改善に奔走するグリフィス達から背を向けて逃げ出し、リインフォースⅡは膝を抱えて泣いていた。 自分は何をしているのだろう……何も出来ない自分、ただモニターを眺めていることだけしか出来ない自分に絶望し、リインフォースⅡはただ涙を流し続ける。 出動要請を受けた時、何か言いようのない胸騒ぎを感じたリインフォースⅡはなのは達との出撃を拒否し、この隊舎での待機を申し出た。 はやての守護騎士としての勘だろうか……リインフォースⅡの予感は見事に的中し、はやてとフェイトは今、絶体絶命の危機に陥っている。 交替部隊の出撃をグリフィスが命じた時、リインフォースⅡも同行するつもりだった。 同じ守護騎士のシャマルとザフィーラも同じ決断に達し、交替部隊と共に出撃していった。 主の危機は自分の危機、そして部隊長の危機は機動六課全体の危機でもある以上、リインフォースⅡ達の選択は当然のものと言える。 では何故、リインフォースⅡは独り、未だこの場所に留まったままなのか――理由は単純である、出撃に間に合わなかったのだ。 機動六課が正式稼動を初めて二週間、部隊長補佐という肩書きを持つリインフォースⅡだが、部署の詳細も隊舎の構造も、未だ完全には把握出来ていない。 特に交替部隊に関してははやてではなくグリフィスの管轄であり、リインフォースⅡはその存在すらも今まで知らなかったというのが本音である。 勝手に意気込んで飛び出し、迷いに迷った挙句に気がつけば独り置いてけぼり……。 肩を落として司令室に戻ったリインフォースⅡを、グリフィスは何も言わずに隣に迎え入れた。 それなのに、この無様……自分は本当に何をやっているのだろう。 惨めさにただ泣き続けるリインフォースⅡの周囲が、いつの間にか薄暗くなった。 停電だろうか……顔を上げたリインフォースⅡは、その時になって漸く、自分を見下ろす人影に気付いた。 ……科学者に化けた熊がいた。 「ひぃやぁあああっ!?」 「……何をやっている」 腰を抜かすリインフォースⅡに、ロージェノムは呆れたように息を吐いた。 「ろ、ロージェノムさん……?」 びっくりしたですーと胸を撫で下ろすリインフォースⅡに、ロージェノムは巌のような顔をにこりともさせずに再び口を開く。 「何をやっている、お前は?」 「…………」 ロージェノムにとっては何気ない、何の意図も無いその問いは、しかしリインフォースⅡの心に深く突き刺さる。 「……本当に、何をやってるんでしょうね。私は……」 顔を伏せ、リインフォースⅡは自嘲するように口を開いた。 「はやてちゃんのために生まれた私なのに、でもはやてちゃんがピンチの今、何も出来ずにここにいるです……」 リインフォースⅡは人間ではない――はやてによって創られたユニゾンデバイス、その管制人格である。 はやてのために生まれ、はやてのために存在する……作り物の生命に過ぎないリインフォースⅡにとって、それだけが己の存在意義であり、そして心の拠り所だった。 「はやてちゃんが呼んでくれれば、私はどんなところにでも飛んでみせる、どんな奇跡でも起こしてみせる……そう思っていたし、そう生きようと決めてたです。 だって、はやてちゃんのことが大好きだから。他の守護騎士の皆に負けない位大好きだから……!」 しかし誓いは破られた。 創造主の危機に馳せ参ずることも出来ずに、こうしてただ泣いているだけの無力な自分……。 痛みを堪えて戦い続ける主に、しかし自分は手をのばすことも、声をかけることも出来ない。 こんな筈ではなかったのに……何もかもが上手くいかない不条理な現実に、リインフォースⅡの幼い心は折れかけていた、砕けかけていた。 「想えば飛べる……か」 リインフォースⅡの独白を聞き終え、ロージェノムはどこか感慨深そうに呟いた。 その時、 「……じゃあ、飛んでみます?」 まるで出番を待っていたかのような絶妙なタイミングで、シャリオが曲がり角の陰から姿を現した。 「……シャーリー?」 困惑の声を上げるリインフォースⅡに、シャリオは柔らかい、そして力強い笑みを浮かべる。 「一緒に飛んでみませんか? リイン曹長の大好きな人のいる場所へ、皆で」 「プラズマザンバー……」 フェイトの掲げた刀身に雷が集中し、 「ラグナロク……」 はやての展開した魔方陣に光がする。 「「――ブレイカー!!」」 気合いと共に放たれた二つの光の奔流が敵を飲み込み、天空を紅蓮一色に染め上げる。 千を数える程存在していた大型ムガンの大群は、今やその半分近くまでその数を減らしていた。 「な、何や……結構やれば出来るもんやないか……!」 「為せば成るってことだね、何事も……!」 荒い呼吸を整え、デバイスを構え直しながら、はやてとフェイトは背中合わせに笑い合う。 出力限定を解除し、聖王教会によるカートリッジ補給支援を受けながらのゴリ押し戦法でここまで戦ってきたが、その効果は予想以上に絶大なものだったらしい。 時空管理局と聖王教会は表面的には協調関係にあるが、管理局本部内では教会との馴れ合いを快く思わぬ者も多数存在しているし、その逆もまた然りというのが現実である。 無断で教会と共同戦線を張り、更に補給まで受けているこの状況は、後々重大な責任問題となって自分達に降りかかってくるだろう。 協力を要請したはやてや実際に支援を受けるフェイトだけでなく、その要望を聞き入れたカリムも、何らかの処罰は免れないだろう。 自分の無茶な「お願い」を快く了承し、身を捨てる覚悟で余所者の自分達を全力で支援してくれているカリムに、持つべきものは姉貴分だなーとはやては改めて感謝する。 しかし、そのおかげで何とかなるかもしれない……僅かな可能性に望みを賭ける二人の思いは、しかし次の瞬間、新たに発生した空間の歪みによって粉々に打ち砕かれた。 蜃気楼のように揺れる空、新たに現れる大量の見飽きた影――敵の増援だった。 「フェイトちゃん……ウチ、泣いて良い?」 「私の方が立ち直れなくなりそうだから我慢して」 元通り――否、それ以上の規模に勢力を回復させたムガン群に、はやてとフェイトは思わず天を仰いだ。 誰か、助けて……絶望に押し潰され、二人の心が悲鳴を上げる。 その時、 ――はやてちゃん!! どこからか、リインフォースⅡの声が聞こえた。 空に――空間に裂け目が入り、巨大な何かが姿を現す。 まるで卵から孵る雛鳥のように、或いは獲物を食い破る獣のように、空間の裂け目をこじ開けながら這い出る鋼の巨人。 完全な人型として洗練されたフォルム――見たことのない、しかしどこか見覚えのある漆黒の巨人に、二人は思わず声を上げる。 「「ラゼンガン!?」」 『否』 二人の目の前に通信ウィンドウが開き、画面いっぱいにロージェノムの顔が映し出される。 『汎用量産型ガンメン、通称グラパール。これはその試作機だ』 『はやてちゃん!!』 淡々と解説するロージェノムを押し退け、今度はリインフォースⅡの顔がウィンドウを占領した。 グラパール腹部のハッチが開き、中から弾丸のように飛び出したリインフォースⅡがはやての元へ駆け寄る。 「ごめんなさい、はやてちゃん……。遅くなっちゃって、肝心な時に傍にいられなくて……」 「リイン……」 胸の中で泣きじゃくるリインフォースⅡを、はやては優しく抱き締めた。 螺旋界認識転移システム――ロージェノムが開発し、埋められていたものをシャリオが発掘した、新型の次元転移装置が、この奇跡を呼び起こした。 宇宙とは曖昧さであり、認識されて初めて確定する――量子宇宙論とも呼ばれる、この宇宙の理である。 認識した物質を元に次元座標を割り出し、時間も空間も無視して対象の元まで一瞬で転移する、それが螺旋界認識転移システムである。 誰にでも使いこなせるものではない。 人の認識力に依存したシステムであるが故に、緻密なイメージ力や強い想いを持つ者でなければ正確な転移は不可能なのだ。 今回の場合は、はやてをを助けたいというリインフォースⅡの強い想いが、はやて達への道を繋いだ――想えば飛べたということである。 「来てくれてありがとな、リイン。それに、ロージェノムさんも……」 胸に抱いたリインフォースⅡと、腕組みして虚空に仁王立ちするグラパールを交互に見遣り、はやてはそう言って泣きながら笑いかけた。 涙に濡れた漆黒の瞳は、希望の輝きを取り戻していた。 「リインが来てくれたから百人力、ロージェノムさんもおるから千人力や。もうあんなガラクタ共に好き勝手させへん、ちょちょいのちょいの超瞬殺や!」 己を奮い立たせるようにそう意気込むはやてに、しかし胸の中のリインフォースは笑いながら首を振る。 「違うですよ、はやてちゃん……千人力じゃないです。皆も来てくれるから一万人力です!」 「……へ?」 「皆……?」 リインフォースⅡの言葉にはやてとフェイトが疑問の声を上げたその時、グラパールの開けた空間の裂け目に新たな変化が起きていた。 まず現れたのは、一本の巨大な筒だった。 まるで砲身のような青い円筒――否、事実それは砲身である。 徐々に姿を現す、戦車に手足を生やしたような青い鋼の巨人――ラゼンガンやグラパールとは大分意匠は異なるが、それはまさしくガンメンだった。 『やっほー、はやてさんにフェイトさーん! 助けに来ましたよー!!』 瞠目するはやてとフェイトを見下ろし、西洋兜を彷彿させる青いガンメン――ダヤッカイザーがぴこぴこと手を振る。 外部スピーカーから響くその聞き覚えのある声に、二人は思わず顔を見合わせる。 「まさか……シャーリー!?」 驚愕したように声を上げるフェイトに、ダヤッカイザーは正解だとばかりに両手の親指を立てた。 唖然とする二人の横で、ダヤッカイザーの広げた空間の穴から更に新たな二つの影――トサカの生えた白いガンメンと、二つの顔を持つ紫色のガンメンが姿を現す。 続々と現れるガンメン達を、空中のはやて達だけでなく、地上で小型ムガン相手に戦う教会騎士達も呆然と見上げていた。 はやての言葉から一騎当千の魔導師部隊を想像していたが、しかし現れたのは謎の巨大ロボ軍団――予想の斜め上を突っ走る「援軍」の登場に、騎士達は言葉を失う。 『切なる叫びが扉を開き、熱き想いが道を拓く!』 戦場全体に轟くような大音量で、ダヤッカイザーが声を張り上げた。 『縁の下の力持ち――』 『――床板ぶち抜き只今参上!』 ダヤッカイザーに追従するように、双頭のガンメン――ツインボークンが言葉を引き継ぐ。 あの声はオペレーターのアルト・クラエッタとルキノ・リリエだろう。 これは、名乗りだ……シャリオ達の口上を聞くはやて達の脳裏に、二人の少女の顔が過る。 鋼鉄の巨人を駆り、名乗りと共に敵に立ち向かう青い髪の少女。 白銀の飛龍を従え、名乗りと共に立ち上がった桃色の髪の少女。 偶然にも敵を前に似たような名乗りを上げた二人の少女は、その前後、二人とも奇跡を起こしてみせた。 『我々は補う者だ――足りぬ力があるならば、我々が追い風となり背中を押そう。 我々は届ける者だ――届かぬ思いがあるならば、我々が橋となり繋ぎ留めよう。 我々は創る者だ――見えぬ未来があるならば、我々がドリルとなり道を掘り進もう。 そう、我々は……助ける者だ』 音を失った――誰もが動きを止めた戦場で、グラパールが朗々と言葉を紡ぐ。 戦士のような気高さと王者のような力強さを併せ持つロージェノムの語りに誰もが呑まれ、そして魅せられていた。 順調に続く名乗りの口上、爆発的に戦場に広がる気合いの波に、しかし乗り切れない者もいた。 「これ、僕もやるの……?」 白いトサカのガンメン――エンキドゥのコクピットで、グリフィスがげんなりとした顔で呻いた。 元々率先して目立つような性格ではない上、自分達とは格の違うようなロージェノムの語りを聞かされた後――及び腰になるグリフィスの気持ちも当然である。 何とか理由をつけて辞退しようと目論むグリフィスだが、そうは問屋が卸さなかった。 『当ったり前でしょ、グリフィス君。 仲間外れにはしないわよ』 『責任重大ですよ? しっかりお願いしますね』 『頑張って下さい! ロウラン補佐官』 応援という形で逃げ道を塞ぐ女性陣に、グリフィスも腹を括った。 『機動六課後方支援部隊、ロングアーチ! 我々を誰だと思っている!!』 エンキドゥの叫んだ締めの言葉と共に、戦士達の反撃が始まった。 天元突破リリカルなのはSpiral 第9話「一緒に飛んでみませんか?」(了) 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/40.html
魔法少女リリカルなのはMOVIE1st THE COMICS第1話 魔法少女リリカルなのはMOVIE1st THE COMICS第2話 魔法少女リリカルなのはMOVIE1st THE COMICS第3話 魔法少女リリカルなのはMOVIE1st THE COMICS第4話
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/32.html
魔法少女リリカルなのはStrikerS 第6話 【進展】 なのは「初めての戦いは、やっぱりピンチの連続だったけど」 フェイト「歩き出した子どもたちは、ちゃんと自分で進んでいってる」 はやて「迷いはひとまず、胸の奥に仕舞っておいて」 なのは「これからも続く、チームでの戦い」 フェイト「合図と一緒に、仲間と一緒に、立ち向かう戦い」 はやて「それぞれの場所での、それぞれの戦い」 なのは「魔法少女リリカルなのはStrikerS…始まります」 リイン「5月13日。部隊の正式稼動後、初の緊急出動がありました。密輸ルートで運び込まれたロストロギア、 レリックをガジェットが発見。輸送中のリニアレールを襲撃。それを阻止、 レリックを回収するという任務でしたが、六課前線メンバー一同の活躍もあって、 無事に解決。確保した刻印ナンバー9のレリックは、現在、中央のラボにて保管、調査中。 初任務としてはまず問題ない滑りだしだ、と部隊長のはやてちゃん。六課の後継人。 騎士カリムやクロノ提督たちも満足されているようです、と」 ヴィータ「あたしやお前のポジション、フロントアタッカーはな。敵陣に単身で切り込んだり、 最前線で防衛ラインを守ったりが主な仕事なんだ。防御スキルと生存能力が高いほど、攻撃時間を長くとれるし、 サポート陣にも頼らねぇで済むって、これはなのはに教わったな」 スバル「はい!ヴィータ副隊長!」 ヴィータ「受け止めるバリア系、はじいてそらすシールド系。身にまとって自分を守るフィールド系。 この三種を使いこなしつつ、ポンポンふっとばされねぇように、下半身のふんばりと、 マッハキャリバーの使いこなしを身につけろ」 ヴィータ「グランファイゼンにぶったたかれたくなかったら、しっかり守れよ」 フェイト「エリオとキャロは、スバルやヴィータみたいに頑丈じゃないから、反応と回避がまずは最重要。 まずは動き回って狙わせない。攻撃が当たる場所に、長居しない!」 フェイト「スピードが上がれば上がるほど、勘やセンスに頼って動くのは危ないの。 ガードウィングのエリオは、どの位置からでも攻撃やサポートをできるように。 フルバックのキャロは、すばやく動いて仲間の支援をしてあげられるように。 確実で、有効な回避アクションの基礎。しっかり覚えていこう」 なのは「ティアナみたいな精密射撃型は、いちいち避けたり受けたりしてたんじゃ、仕事ができないからね」 なのは「足はとめて、視野は広く。射撃型の真髄は?」 ティアナ「あらゆる相手に、性格な弾丸をセレクトして、命中させる。判断速度と命中精度!」 なのは「チームの中央に立って、誰より早く中長距離を制する。それが私やティアナのポジション、センターガードだよ」 ティアナ「はい!」 エリオ「もう物心ついたころから、色々よくしてもらって。魔法も、ボクが勉強を初めてからは時々教えてもらってて。 本当にいつも優しくしてくれて。ボクは今もフェイトさんに育ててもらってるって思ってます。 フェイトさん、子供の頃に、家庭のことでちょっとだけ寂しい思いをしたことがあるって。 だから、寂しい子供や、悲しい子供のこと、ほっとけないんだそうです」 エリオ「自分も、優しくしてくれるあったかい手に救って貰ったからって」 フェイト「変じゃない?」 なのは「全然変じゃないよ。ちゃんとかわいいよ、フェイトちゃん!」 ゲンヤ「ま、うちの捜査部をつかってもらうのはかまわねぇし、密輸調査はうちの本業っちゃあ本業だ。 頼まれねぇことはないんだが…」 はやて「お願いしますぅ」 ゲンヤ「八神よ。他の機動部隊や本局捜査部じゃなくてわざわざうちに来るのは、何か理由があるのか?」 はやて「密輸ルートの捜査自体は彼らにも依頼しているんですが、 地上のことはやっぱり地上部隊が一番よく知ってますから」 ゲンヤ「ふん。まぁ、筋は通ってんな」 シャーリー「それにしても、よく分からないんですよね、レリックの存在意義って」 フェイト「うん」 シャーリー「エネルギー結晶体にしてはよく分からない機構が沢山あるし、動力器官としても何だか変だし」 フェイト「まぁ、すぐに使い方が分かるようなものなら、ロストロギア指定はされないもの」 フェイト「随分昔に、私となのはが探し集めてて…。今は局の保管庫で管理されているはずのロストロギア」 シャーリー「ほぉ、なるほど。…って、なんでそんなものが!?」 フェイト「Dr.ジェイル・スカリエッティ。ロストロギア事件関連を初めとして、 数え切れないぐらいの罪状で超広域指名手配されてる一級捜索指定の次元犯罪者だよ」 シャーリー「次元犯罪者…」 フェイト「ちょっと事情があってね。この男のことは、何年か前からずっと追ってるんだ」 シャーリー「そんな犯罪者が、何でこんなに分かりやすく自分の手がかりを?」 フェイト「本人だとしたら挑発。他人だとしたらミスリード狙い。どっちにしても、 私やなのはがこの事件に関わってるって知ってるんだ」 フェイト「あの男は、Drのとおり名通り、生命操作とか生体改造に関して異常な情熱と技術を持っている。 そんな男が、ガジェットみたいな機械を大量に作り出してまで求めるからには……」 なのは「細かいことで、叱ったりどなりつけてる暇があったら、模擬戦で徹底的にきっちり打ちのめしてあげるほうが、 教えられる側は学べることが多いって。…教導隊では、よく言われてるしね」 ヴィータ「おっかねぇなぁ。おい」 なのは「私たちがするのは、まっさらな新人を教えて育てる教育じゃなくて。強くなりたいって、 意思と熱意を持った魔道師に今よりハイレベルな戦闘技術を教えて、導いてゆく。戦技教導だから」 ヴィータ「連中は自分たちがどんだけ幸せか、気づくまで結構時間がかかるだろうなぁ。 自分勝手に戦ってる時も、いつだってなのはに守られて幸せに。 …あたしはスターズの副隊長だからな。おまえのことは、あたしが守ってやる!」 スバル「今度の任務はホテルの警備とオークションの護衛」 ティアナ「オークションを狙うガジェットと謎の召還魔道師」 スバル「次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS第7話」 ティアナ「ホテル・アグスタ」 スバル・ティアナ「Take off!」
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1517.html
プロローグ 闇夜に輝く凶星 それは…忌まわしき、闇の書事件から1年後の冬の話 時空管理局…それは、様々な時空間で起こる犯罪を防止し、また起こしたものを見つけ出し逮捕することが仕事である。 そこでは時空間におけるありとあらゆるトラブルを見つけ出すことが可能とされている。 「あーあー、なんで新入りの私たちが留守番で、なのはたちが休暇なんだよ」 ヴィーダは足を机にのせて、管制塔の窓から外を見ている。 「仕方ないでしょ。あなた達のせいでずっとあの二人は働きづめだったんだから」 エィミィは文句を言っているヴィータにきたいして強くいってきかす。 それでもヴィータは文句をいい続けている。 他のシグナムやザフィーラたちは、今は他の業務にへと当たっていた。仕事に慣れるにはいいことだろう。 これは、早く仲間として打ち解けあうようにと考えた、はやてからの提案である。 突然、管内に音が鳴り響く。 「わぁ!!」 その音に思わず、イスから転げ落ちるヴィータ。 「なにがおきたの!?」 エィミィが画面を見る。そこには考えられない次元の乱れが生じている。 「なんなの?これ…」 一方その頃…。 「なのはは今年の冬はどうするの?」 「うーん。クリスマスパーティーが家のと管理局のでかぶっちゃってるんだよね」 寒い風が吹く夜の街を、フェイト・T・ハラオウンと高町なのはが歩いている。 学校と魔法世界での二重生活を始めてもうすぐ、二年がたとうとしていた。 まるで夢のような出来事が、ずっと続いている。 魔法を使えるようになり、そして恐ろしい怪物と戦って、フェイトちゃんや、はやてちゃんとであった…。 いろんな人に出会い、様々な経験をした。 今日も何事もなく時間だけがすぎていく。世界は平和に満ちている。 あたりはクリスマスの色に包まれていた。街路樹に光がともり、サンタさんが風船を配っている。 フェイトは、そんな町の風景が気になるのだろうか、目を輝かしている。 それもそうだろう。 まだフェイトちゃんにとってはすべてが目新しいはずだ。 今まで彼女の母親がフェイトちゃんを統制していたのだから。 「フェイトちゃん、ひとつもらっていこっか?」 「え…」 自分の珍しい視線が見られていたことを知って、恥ずかしさに頬を染めるフェイト。 だがそのフェイトの手をひいて、なのはは駆け出していた。 「あんな、かわいい子が…強力な力を持つ魔法少女ねー。人は見た目に寄らないもの…か」 白髪で狐目の鋭い瞳をした小柄な男子が二人の後ろを見ながら唱える。 その格好はどこにでもいる普通の学生のようだ。 彼が片手に持つ一つの本。 それは『蠅の王』である。 「人間って言うのは、自分達の世界だけじゃ飽きたりない傲慢な生き物だよね。まったく」 その少年は邪悪に満ちた笑みを浮かべ、頭上を見上げる。 …その黒い夜の闇の中。 月の輝きの隣に赤く禍々しい色をした星がそこにあることを誰も知らない。 「祭の邪魔は誰にもさせないよ…」 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1790.html
魔法少女リリカルなのはsts masked rider kabuto クロス元:仮面ライダーカブト 最終更新:08/03/08 第一話 第二話 第三話 TOPページへ このページの先頭へ
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/49.html
魔法少女リリカルなのはStrikerS 第20話【無限の欲望】 フェイト「ジェイル・スカリエッティ。いくつもの世界で指名手配された広域次元犯罪者。 通信映像や音声のデータは数多く残っているものの、未だ、人前に姿を現したことはなく、 逮捕歴もない。多くの命を弄び、生体改造兵器を作り出し、管理局地上本部にテロをしかけ、 とうとう、古代の遺産まで呼び起こしてしまった。空へ上がる聖者の船を前に、私たちは」 シャッハ「騎士カリム。これが、あなたの予言にあった」 カリム「踊る死者たち、死せる王の下。聖地より帰った船。古代ベルカ、聖王時代の究極の質量兵器。 天地を統べる聖者の船。聖王の…ゆりかご」 はやて「一番なって欲しくない状況になってもうたんかな?」 カリム「教会の、ううん、私の不手際だわ。予言の解釈が不十分だった」 はやて「未来なんて、分からへんのが当たり前や。カリムや教会の皆さんのせいとちゃう。さて、どないしよか」 クロノ「はやて、クロノだ。本局は、巨大船を極めて危険度の高いロストロギアと認定した。 次元航行部隊の艦隊は、もう動き出している。地上部隊も協力して、事態にあたる。機動六課、動けるか?」 はやて「うん」 ウーノ「聖王の器とゆりかごは、安定状態に入ったわ。クアットロとディエチはゆりかご内より私と交代。 トーレとセッテ、セインはラボでドクターの警護。ノーヴェは、ディードとウェンディ、13番目と一緒に。 ゆりかごが完全浮上して、主砲を撃てる位置」 クアットロ「二つの月の魔力を受けられて、地上攻撃ができる軌道位置までたどり着ければ、ゆりかごはまさに無敵」 トーレ「ミッドの地上全てが人質だ。その状態なら、本局の主力艦隊とでも渡り合える!」 ウェンディ「そういや、一個疑問があるんッスけど」 トーレ「なんだ?」 ウェンディ「あのゆりかごの中にいる聖王の器とかいう女の子って、ぶっちゃけ何?」 スカリエッティ「ふふふ、私が教えようか?」 トーレ「ドクター」 スカリエッティ「今から、10年ばかり前になるかね。聖王教会にある司祭がいてね。 彼は敬謙な教徒にして、高潔な人格者だった。それゆえに、聖遺物管理という重職についていたんだよ」 ウェンディ「せい、いぶつ?」 クアットロ「聖王教会の信仰の対象。古代ベルカ時代の聖なる王様、聖王陛下の持ち物だったものとか、遺骨とかのことよ」 ウェンディ「へぇ~」 スカリエッティ「だが、司祭といえど人の子だ。彼は、ある女性への愛から、 それに手をつけてしまったんだよ。そして、聖ナイフに極わずかに含まれた血液からは、 遺伝子情報が取り出された。古代ベルカを統べた偉大な王。聖王の遺伝子データがね。 そうして、聖王の種は各地に点在する研究機関で極秘裏に複製され、再生を待った」 セイン「はい、ドクター。質問」 スカリエッティ「どうぞ、セイン」 セイン「レジアスのおっちゃんはまぁいいとしてさ。最高評議会だっけ?あっちのほうはいいの? ガジェットの量産とか人造魔道師計画の支援をしてくれたのってあの人たちだよね?」 スカリエッティ「ああ、そうとも」 セイン「ゼスト様とかルーお嬢様も評議会の発注で復活させたんでしょ? 評議会には評議会で何かプランとか思惑とかあったんじゃ」 スカリエッティ「レジアスも最高評議会も希望は一緒さ。地上と次元世界の平和と安全。 そのために、レジアスは計画を頓挫させられた戦闘機人に拘り、 最高評議会はレリックウェポンと人造魔道師計画に拘わった。平和を守り、正義を貫くためなら、 罪もない人々に犠牲を出してもいいと、なかなか傲慢な矛盾を抱えておいでだ」 セイン「ん~、何かよく分かんないなぁ」 ウェンデイ「ッスね~」 セイン「ともかく、スポンサーである評議会のことを無視して、あんなでっかいおもちゃを呼び出したりしたら、 怒られるんじゃないのって私は心配」 スカリエッティ「はははは、ちゃんと怒られないようにしてあるさ。君たちは何も気にせずに楽しく遊んできてくれればいい。 遊び終わったら我らの新しい家に、ゆりかごに帰ろう。そうすれば、世界の全てが我々の遊び場だ」 セイン『へぇ、相変わらずドクターの話はよく分からんねぇ~』 ウェンディ『そうッスね~。ま、あたしら別に夢や希望があるわけでもなし。生みの親の言う通りに動くしかないッスけどね~』 「ジェイルは少々やりすぎだな」 「レジアスとて、我らにとっては重要な駒の一つであるというのに」 「我らが求めた聖王のゆりかごも、奴は自分のおもちゃにしようとしている。止めねばならんな」 「だが、ジェイルは貴重な個体だ。消去するにはまだ惜しい」 「しかし、かの人造魔道師計画もゼストは失敗。 ルーテシアも成功には至らなかったが聖王の器は完全なる成功のようだ。そろそろ、良いのではないか?」 「我らが求むるは優れた指導者によって統べられる世界。我らがその指導者を選び、 その影で我らが世界を導かねばならぬ。そのための生命操作技術。そのためのゆりかご」 「旧暦の時代より世界を見守るために、わが身を捨てて永らえたが、もうさほどは長く持たぬ」 「だが時限の海と管理局は、未だ我らが見守ってゆかねばならぬ。ゼストが五体無事であればな。 ジェイルの監査役として最適だったのだが」 「あれは武人だ。我らには御せぬよ。 戦闘機人事件の追跡情報とルーテシアの安全と引き換えにかろうじて鎖をつけていただけだ。 奴がレジアスにたどり着いてしまえば、そこで終わりよ」 ミゼット「旧暦の時代。バラバラだった世界を平定したのは最高評議会の三人。 現役の場を次の世代、私たちや時空管理局ってシステムに託してからも、 評議会制を作って見守ってくれていた。レジィ坊や…、ジアス中将もやり方が時々乱暴ではあったけど、 地上の平和を守り続けてきた功労者。だから、彼らが今回の事件に関わっているなんて、 信じたくは、ないのだけれど」 クロノ「……」 はやて「理由はどうあれ、レジアス中将や最高評議会は、偉業の天才犯罪者、ジェイル・スカリエッティを利用しようとした。 そやけど、逆に利用されて裏切られた。どこからどこまでが誰の計画で、何が誰の思惑なのか、それはわからへん。 そやけど今、巨大船が空を飛んで町中にガジェットと戦闘機人が現れて、市民の安全を脅かしてる。 これは事実。私たちは、止めなあかん」 フェイト「ゆりかごには、本局の艦隊が向かってるし、地上の戦闘機人たちやガジェットも各部隊が協力して対応にあたる」 なのは「だけど、高レベルなAMF戦をできる魔道師は多くない。 私たちは3グループに分かれて各部署に協力することになる」 フェイト「別グループになっちゃったね。ごめんね、私、いつも大切な時に二人の傍にいられないね」 エリオ「そんな」 キャロ「フェイトさん、一人でスカリエッティのところになんて心配で」 フェイト「緊急事態のためにシグナムには地上に残ってもらいたいし、アコース査察官やシスターシャッハも一緒だよ。 一人じゃない。二人とも頑張って。絶対無茶とかしないんだよ」 キャロ「はい」 エリオ「それは、フェイトさんも同じです」 シグナム「ゼスト・グランガイツと融合器アギトだな」 リイン「え!?」 シグナム「騎士ゼストについては、ナカジマ三佐がご存知だったよ。元管理局員、首都防衛隊のストライカー級魔道師。 八年前に亡くなられたはずの、レジアス中将の、親友だそうだ」 なのは「今回の出動は、今までで一番ハードになると思う」 ヴィータ「それに、あたしもなのはもおまえらがピンチでも、助けにいけねぇ」 なのは「だけど、ちょっと目を瞑って今までの訓練のことを思い出して。ずっと繰り返してきた基礎スキル。 磨きに磨いたそれぞれの得意技。痛い思いをした防御練習。 全身筋肉痛になるまで繰り返したフォーメーション。いつもボロボロになるまで私たちと繰り返した模擬戦」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「ぐぅ」 なのは「目、あけていいよ。まぁ、私が言うのもなんだけど、きつかったよね」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「あははは」 ヴィータ「それでも、四人ともここまでよくついてきた」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「え?」 なのは「四人とも、誰よりも強くなった、とは、まだちょっと言えないけど。だけど、どんな相手がきても、 どんな状況でも絶対に負けないように教えてきた。守るべきものを守れる力。救うべきものを救う力。 絶望的な状況に立ち向かっていける力。ここまで頑張ってきた皆は、それがしっかり身についてる。 夢見て憧れて、必死に積み重ねてきた時間。どんな辛くても止めなかった努力の時間は、絶対に自分を裏切らない。 それだけ、忘れないで」 ヴィータ「きつい状況をビシっとこなしてみせてこそのストライカーだからな」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「はい!」 なのは「じゃあ、機動六課フォワード隊、出動!」 ヴィータ「いってこい!」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「はい!!」 なのは「スバル。ギンガのこともあるし、きっと」 スバル「あの!違うんです!」 なのは「っ」 スバル「ギン姉はたぶん、大丈夫です。私が、きっと助けます。今は、なのはさんとヴィヴィオのことが」 なのは「ありがとう、スバル。でも大丈夫だよ。一番怖いのは、現場に行けないことだったんだけど、 八神部隊長がそこをクリアーしてくれた。現場に行って全力全開でやっていいんだったら、 不安なんて何もない。ヴィヴィオも大丈夫。私がきっと助けてみせる。だから、心配ないよ」 スバル「あ」 なのは「スバルが憧れてくれたなのはさんは、誰にも負けない、無敵のエースだから」 スバル「はい」 なのは「スバルだって、うちの自慢のフロントアタッカーなんだからね。相棒と、 マッハキャリバーと一緒に、負けないで頑張ってきて」 スバル「はい!」 ティアナ「出動前に何泣いてんのよ」 スバル「なのはさん、頑張ってって言おうと思ったのに」 ティアナ「逆に励まされて帰ってきた?」 スバル「うん」 ティアナ「馬鹿ね~。あんたがなのはさんを励ますなんて10年早いってことでしょ? なのはさんを励ましたいなら、今よりずっと強くなって立派にならなきゃさ」 スバル「うん」 はやて「ほんなら、隊長陣も出動や!」 なのフェ「うん!」 ヴィータ「おう!」 カリム「機動六課隊長、副隊長一同。能力限定、完全解除。 はやて、シグナム、ヴィータ、なのはさん、フェイトさん、皆さん、どうか」 はやて「しっかりやるよ」 フェイト「迅速に解決します」 なのは「お任せください」 カリム「うん。リミット、リリース!」 フェイト「なのは」 なのは「フェイトちゃん」 フェイト「なのはとレイジングハートのリミットブレイク、ブラスターモード。なのはは言っても聞かないだろうから、 使っちゃ駄目、とは言わないけど。お願いだから、無理だけはしないで」 なのは「私はフェイトちゃんのほうが心配。フェイトちゃんとバルディッシュのリミットブレイクだって、 凄い性能な分危険も負担も大きいんだからね」 フェイト「私は平気。大丈夫」 なのは「んぅ、フェイトちゃんは相変わらず頑固だなぁ」 フェイト「な、なのはだって、いつも危ないことばっかり」 なのは「だって、航空魔道師だよ?危ないのも仕事だもん」 フェイト「だからって、なのは無茶が多すぎるの!」 はやて・ヴィータ「はあぁ」 フェイト「私が、私たちがいつも、どれくらい心配してるか」 なのは「知ってるよ」 フェイト「ん」 なのは「ずっと心配してくれてたこと、よく知ってる。…だから、今日もちゃんと帰ってくる。 ヴィヴィオを連れて、一緒に元気で帰ってくる!」 フェイト「ぁ、うん!」 はやて「あの、フェイトちゃん。そろそろ」 フェイト「あ、ぁ、うん!」 ヴィータ「フェイト隊長も無茶すんなよ。地上と空は、あたしらがきっちり抑えるからな!」 フェイト「うん!大丈夫」 なのは「頑張ろうね」 フェイト「うん。頑張ろう」 なのは『悲しい出来事。理不尽な痛み。どうしようもない運命。そんなのが嫌いで、 認められなくて、撃ち抜く力が欲しくて…私はこの道を選んで、 おんなじ思いを持った子たちに技術と力を伝えていく仕事を選んだ。 この手の魔法は、大切なものを守れる力。思いを貫き通すために、必要な力。待っててね、ヴィヴィオ!』 ドゥーエ「あなたが見つけ出し、生み出し育てた異能の天才児、 失われた世界の知恵と限りない欲望をその身に秘めたアルハザードの遺児。 開発コードネーム。アンリミテッドデザイア、ジェイル・スカリエッティ。 彼を生み出し、力を与えてしまった時点でこの運命は決まっていたんですよ。 どんな首輪をつけようと、いかなる檻に閉じ込めようと、扱いきれるはずもない力は、必ず破滅を呼ぶものです」 ヴィータ「中への突入口を探せ!突入部隊!位置報告!」 なのは「第7密集点撃破!次!!」 隊員「は、はい!」 次回予告 なのは「ゆりかごへ突入する私と、ヴィータ副隊長」 フェイト「スカリエッティのアジトへ突入する、私とシスターシャッハ」 なのは「そして、フォワードたちも…」 フェイト「次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS第21話」 なのは「決戦」 なのフェ「Take off!」
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/42.html
魔法少女リリカルなのはStrikerS 第11話【機動六課のある休日(後編)】 なのは「訓練漬けの毎日。息抜きにって用意したまる一日のお休み」 フェイト「親友同士、パートナー同士、楽しく過ごせるように」 なのは「気持ちも新たに、明日からも頑張れるように」 フェイト「だけどその休日は…突然の事態に一時中断」 なのは「現れたのは、レリックのケースを持った小さな女の子」 フェイト「事件は今、静かに動き出す」 なのは「魔法少女リリカルなのはStrikerS…始まります」 カリム「それにしても、あなたの制服姿はやっぱり新鮮ですね」 クロノ「ああ…制服が似合わないというのは、有人どころか妻にまで言われますよ」 カリム「ふふ…そんなぁ。いつもの防護服と同じぐらい凛々しくていらっしゃいますよ、クロノ提督」 クロノ「ありがとうございます、騎士カリム」 クロノ「こっちもちょうど、六課の運営面についての話が終わったところだよ」 カリム「ここからは今後の任務についての話。あなたも同席して、聞いておいてね」 ティアナ「ケースの封印処理は?」 エリオ「キャロがしてくれました。ガジェットが見つける心配は…ないと思います。…それから、これ」 ティアナ「ケースはもう一個あった…?」 エリオ「今、ロングアーチに調べて貰ってます」 ティアナ「隊長たちとシャマル先生、リィン曹長がこっちに向かってくれてるそうだし、 とりあえず、現状を確保しつつ周辺警戒ね」 カリム「そう…レリックが…」 はやて「それを小さな女の子が持ってたぁいうんも気になる。ガジェットや召還師が出て来たら、 市街地付近での戦闘になる。なるべく迅速に、確実に片付けなあかん」 クロノ「近隣の部隊には、もう?」 はやて「うん…市街地と海岸線の部隊には、連絡したよ」 クロノ「ああ」 はやて「奥の手も、出さなあかんかもしれん」 クロノ「そうならないことを祈るかな」 なのは「ケースと女の子は、このままヘリで搬送するから、皆はこっちで現場調査ね」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「はい!」 シャマル「なのはちゃん。この子をヘリまで抱いていってもらえる?」 なのは「あ…はい!」 シャリオ「ガジェット、来ました!地下水路に数機ずつのグループで総数16…20!」 アルト「海上方面12機単位が5グループ!」 はやて「…多いなぁ」 はやて「ほんならヴィータはリインと合流。協力して、海上の南西方向を制圧」 リイン「南西方向了解です!」 はやて「なのは隊長とフェイト隊長は、北西部から」 なのは・フェイト「了解」 はやて「ヘリのほうはヴァイス君とシャマルに任せてええか?」 ヴァイス「お任せあれ!」 シャマル「しっかり守ります」 はやて「ギンガは、地下でスバルたちと合流。道々、謁見のほうの話も聞かせてな」 ギンガ「はい!」 フェイト「フォワードの皆。ちょっと頼れる感じになってきた?」 なのは「あはは…もっと頼れるようになってもらわなきゃ」 フェイト「…うん」 フェイト「早く事件を片付けて、また今度、お休みあげようね」 なのは「うん」 フェイト「皆で遊びに行ったら、きっと楽しいよ」 なのは「うんっ」 ウーノ「ヘリに確保されたケースのマテリアルは、妹たちが回収します。お嬢様は地下のほうに」 ルーテシア「うん」 ウーノ「騎士ゼストとアギト様は?」 ルーテシア「…別行動」 ウーノ「お一人ですか…」 ルーテシア「一人じゃない。……私には、ガリュウがいる」 ウーノ「失礼しました。協力が必要でしたら、お申し付けください。最優先で実行します」 ルーテシア「うん。…行こうか、ガリュウ。探し物を見つけるために」 エリオ「ギンガさんって…スバルさんの、お姉さんですよね?」 スバル「そう!私のシューティングアーツの先生で、歳も階級も二つ上」 ギンガ「私が呼ばれた事故現場にあったのは、ガジェットの残骸と壊れた生体ポッドなんです。 ちょうど5、6歳の子供が入るくらいの…」 ギンガ「近くに何か…重いものを引きずって歩いたような跡があって…それを辿っていこうとした最中、 連絡を受けた次第です。それから、この生体ポッド…少し前の事件でよく似たものを見た覚えがあるんです」 はやて「私も、な」 ギンガ「人造魔道師計画の…素材培養機」 シャマル「!」 ギンガ「これは、あくまで推測ですが、あの子は人造魔道師の素材として、作り出された子供ではないかと」 キャロ「人造魔道師って?」 スバル「優秀な遺伝子を使って人工的に生み出した子供に、投薬とか機械部品の埋め込みで、 後天的に強力な魔力や能力を持たせる。それが、人造魔道師」 ティアナ「倫理的な問題はもちろん、今の技術じゃどうしたって色んな無理が生じる。コストも合わない。 だから、よっぽどどうかしてる連中でもない限り、手を出したりしない技術のはずなんだけど…」 ヴィータ「おっし。いい感じだ」 リイン「リインも絶好調です~!」 ヴィータ「ガンガン行くぞぉ。さっさと片付けて他のフォローに回らねぇと」 リイン「はいですぅ!!……ん?あれは…」 ヴィータ「……増援?」 なのは「この反応」 フェイト「……っ!」 クアットロ「ふふふっ。クアットロのインヒュールタスキルシルバーカーテン。嘘と幻のイリュージョンで回ってもらいましょ?」 アルト「航空反応増大!これ…嘘でしょ!?」 グリフィス「なんだ…これは!」 シャリオ「波形チェック!誤認じゃないの!」 アルト「問題、でません!どのチェックも実機としか。なのはさんたちも…目視で確認できるって」 フェイト「幻影と実機の構成編隊?」 なのは「防衛ラインを割られない自信はあるけど。ちょっとキリがないね」 フェイト「ここまで派手な引き付けするってことは」 なのは「地下か、ヘリのほうに主力が向かってる」 フェイト「なのは。私が残って、ここを抑えるから。ヴィータと一緒に」 なのは「フェイトちゃん!?」 フェイト「コンビでも、普通に空戦してたんじゃ時間がかかりすぎる。限定解除すれば広域殲滅で、まとめて落とせる!」 なのは「それは、そうだけど」 フェイト「何だか嫌な予感がするんだ」 なのは「でも、フェイトちゃん…」 はやて「割り込み失礼!」 はやて「ロングアーチからライトニング01へ。その案も、限定解除申請も、部隊長権限により却下します!」 フェイト「はやて!」 なのは「はやてちゃん!何で騎士甲冑!?」 はやて「嫌な予感は私も同じでなぁ。クロノ君から、私の限定解除許可を貰うことにした。 空の掃除は私がやるよ。っちゅーことで、なのはちゃんフェイトちゃんは、地上に向かってヘリの護衛。 ヴィータとリインはフォワード陣と合流。ケースの確保を手伝ってな!」 ヴィータ・リイン「了解!」 クロノ「君の限定解除許可を出せるのは、現状では、ボクと騎士カリムの一度ずつだけだ。 承認許諾の取り直しは難しいぞ。使ってしまっていいのか?」 はやて「使える能力を出し惜しみして、後で後悔するんは嫌やからな」 クロノ「場所が場所だけにSSランク魔道師の投入は許可できない。限定解除は3ランクのみだが、それでいいか?」 はやて「S…。それだけあれば、十分や」 クロノ「はぁ…。八神はやて。能力限定解除、3ランク承認。リリースタイム。120分」 はやて「リミット……リリース!!」 クロノ「ふう…」 カリム「完全解除じゃない分許諾取り直しもいくらか優しくなるかもしれませんし、ね?」 クロノ「気休め程度ですかね…。地上部隊は、上層部が厳しいです」 はやて「よし。久しぶりの遠距離広域魔法。いってみよか!」 ティアナ「空の上は、何だか大変みたいね」 スバル「うん」 ギンガ「一緒にケースを探しましょう。ここまでのガジェットは、ほとんど、叩いてきたと思うから」 スバル「うん!」 シャリオ「サイティングサポートシステム、準備完了です!シュベルトクロイツとのシンクロ率誤差、修正終了」 はやて「うん、了解。ごめんな。精密コントロールとか長距離サイティングはリインが一緒やないと、どうも苦手で…」 シャリオ「その辺はこっちにお任せください。準備完了です!」 はやて「おおきにな!」 スバル「こぉら!そこの女の子!それ危険なものなんだよ!触っちゃ駄目!こっちに渡して!」 ルーテシア「……」 ティア「ごめんね、乱暴で。でもね、これ本当に危ないものなんだよ?」 アギト「ルールー。1、2、3で目ぇつぶれ!」 アギト「ったくも~。あたしたちに黙って勝手に出掛けちゃったりするからだぞ~!ルールーもガリュウも」 ルーテシア「アギト…」 アギト「おう!本当に心配したんだからな。ま、もう大丈夫だぞ、ルールー!何しろこのあたし! 烈火の剣精!アギト様が…きたからな!おらおら!おまえらまとめて、かかってこいや!!」 次回予告 フェイト「現れた、新たな影。消えない不安」 なのは「何が出ても、誰が来ても…しっかり切り抜けて、守り抜く」 フェイト「次回魔法少女リリカルなのはStrikerS12話」 なのは「ナンバーズ」 なのは・フェイト「Take off!」
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/194.html
高町なのは いつまでも教導官魂を忘れないエース・オブ・エース 都筑真紀 25歳になりましたが相変わらずななのはさんです。なにげに本編の笑顔担当だったりも。 第二部は日常系描写が増えるので、戦闘以外での出番が増えるかも? 緋賀ゆかり 25歳になったなのはさんです! 前シリーズ『魔法少女リリカルなのはStrikerS』時よりも大人の雰囲気を出したいと思って描いています。 スバル・ナカジマ トーマを優しく見守る姉貴分の防災士長 都筑真紀 トーマが大変なことになっていたりティアナが別現場だったりで4巻ではいろいろ心配と苦労の連続な防災士長。 第二部ではわりとあははと笑ってられる……かな? 緋賀ゆかり ドラマCD『StrikerS サウンドステージX』の奥田(泰弘)さんのスバルの絵から数年、 時を重ねたイメージで髪型を調整しています。 フェイト・T・ハラウオン なのはとのタッグ健在 強く美しき執務官 都筑真紀 相変わらずなのはさんのピンチにはちゃんと駆けつけます、フェイトさん25歳。 BJ時には髪型も変わって、すっかり大人の女性です。 緋賀ゆかり フェイトさんも25歳ということで落ち着いた雰囲気を出すために髪型がひとつ結びになっています。 八神はやて いまだ真意は謎に包まれた特務六課司令 都筑真紀 がんばるちびたぬ部隊長、25歳ですが身長はあまり伸びてません。 気苦労と不運続きな部隊長ですが、明るいみたい目指して頑張って欲しいところです。 緋賀ゆかり 前髪に分け目ができて左耳に髪の毛をかけて後ろ髪を流しています。 実は、『魔法少女リリカルなのはStrikerS』の時より少し痩せた、という設定になっているようです。
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/34.html
魔法少女リリカルなのはStrikerS 第8話 【願い、ふたりで】 スバル「私達は、ずっと一緒にやってきた。辛い時も苦しい時も楽しい時も… 支えあって、助け合って…一緒に戦ってきた。大好きな友達!っていうと怒るけど、 私にとっては夢への道を一緒に進む、大切なパートナー。失敗も躓きも後悔も一緒に背負う。 だから、一緒に立ちあがろう?魔法少女リリカルなのはStrikerS…始まります」 なのは「えっと…。報告は以上かな。現場検証は調査班がやってくれてるけど、皆も協力してあげてね。 しばらく待機して何もないようなら、撤退だから」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「はい!!」 なのは「で。ティアナは……。ちょっと、私とお散歩しよっか?」 ティアナ「あっ……はい…」 なのは「失敗しちゃったみたいだね」 ティアナ「すみません。…一発…それちゃって…」 なのは「私は現場にいなかったしヴィータ副隊長に叱られて、もうちゃんと反省してると思うから、 改めて叱ったりはしないけど」 なのは「ティアナは時々、一生懸命すぎるんだよね。それでちょっと、やんちゃしちゃうんだ」 なのは「でもね。ティアナは一人で戦ってるわけじゃないんだよ。 集団戦での、私やティアナのポジションは前後左右、全部が味方なんだから」 ティアナ「……!!」 なのは「その意味と今回のミスの理由、ちゃんと考えて同じことを二度と繰り返さないって…約束できる?」 ティアナ「はい」 なのは「うん。…なら、私からはそれだけ」 なのは「約束したからね」 ティアナ「……はい」 キャロ「えっと…シャーリーさん?」 シャーリー「はいな~?」 キャロ「フェイトさんと一緒にいらっしゃる方、考古学者のユーノ先生って伺ったんですが」 シャーリー「そう!ユーノ・スクライア先生。時空管理局のデータベース、 無限書庫の司書長にして古代遺跡の発掘や研究で業績を上げてる考古学者。 局員待遇の民間学者さんっていうのが、一番しっくりくるかな~。なのはさん、フェイトさんの幼馴染なんだって」 キャロ「はぁ~」 ユーノ「そう…。ジュエルシードが…」 フェイト「うん…」 フェイト「局の保管庫から地方の施設に貸し出してて…そこで盗まれちゃったみたい」 フェイト「まあ、引き続き追跡調査はしてるし、私がこのまま六課で事件を追っていけば… きっと、たどり着くはずだから」 ユーノ「フェイトが追ってる、スカリエッティ…」 フェイト「うん……でも、ジュエルシードをみて、懐かしい気持ちも出てきたんだ。 寂しいさよならもあったけど、私にとっては、いろんなことの始まりのきっかけでもあったから」 なのは「今日は…偶然なのかな?」 ヴェロッサ「僕も何か手伝えたらいいんだけどね」 はやて「アコース査察官も遅刻とサボリは常習やけど、基本的には忙しいやん」 ヴェロッサ「ひどいや」 ヴィータに「ちょっといいか?」 ヴィータ「訓練中から時々気になってたんだよ、ティアナのこと」 なのは「うん」 ヴィータ「強くなりたいなんてのは若い魔道師なら皆そうだし、無茶も多少はするもんだけど、 時々ちょっと度を超えてる。あいつ…ここに来る前、何かあったのか?」 なのは「うん……」 キャロ「ティアさんの…お兄さん?」 スバル「うん。…執務官志望の、魔道師だったんだけど。ご両親を事故で亡くしてからは、 お兄さんが一人でティアを育ててくれたんだって。だけど…任務中に…」 キャロ「亡くなっちゃったんですか?」 スバル「ティアがまだ…10歳の時にね」 なのは「ティアナのお兄さん、ディータ・ランスター。当時の階級は一等空尉。所属は首都航空隊。享年21歳」 ヴィータ「結構なエリートだな」 フェイト「そう…。エリートだったから、なんだよね。ディータ一等空尉が亡くなったときの任務。 逃走中の違法魔道師に手傷は負わせたんだけど、取り逃がしちゃってて…」 なのは「まぁ、地上の陸士部隊に協力を仰いだおかげで、犯人はその日のうちに取り押さえられたそうなんだけど」 フェイト「その件についてね、心無い上司がちょっとひどいコメントをして…一時期、問題になったの」 ヴィータ「コメントって……なんて?」 スバル「犯人を追い詰めながらも逃すなんて、首都航空隊の魔道師としてあるまじき失態で、 たとえ死んでも取り押さえるべきだった…とか。もっと直球に、任務を失敗するような役立たずはうんぬん…とか」 なのは「ティアナはその時、まだ10歳。たった一人の肉親を失くして、 しかもその最後の仕事が無意味で役にたたなかったって言われて…。 きっともの凄く傷ついて、悲しんで…」 スバル「だからティアは、証明するんだって。お兄さんが教えてくれた魔法は、 役立たずじゃない。どんな場所でも、どんな任務でもこなせるって。それで…残された夢を、 お兄さんが叶えられないで終わっちゃった執務官になるって夢を、叶えるんだって。 ティアがあんなに一生懸命で必死なのは、そのせいなんだよ」 スバル「で、ティアが考えてることって?」 ティアナ「短期間で、とりあえず戦力をアップさせる方法。うまくできれば、 あんたとのコンビネーションの幅もぐっと広がるし、エリオやキャロのフォローももっとできる」 なのは「じゃあ、引き続き個人スキルね。基礎の繰り返しになるけど、ここはしっかり頑張ろう!」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「はい!!」 スバル「なのはさん…。優しいから」 フェイト「私も手伝おうと思ったんだけど」 ヴィータ「今はスターズの番」 フェイト「ほんとは、スターズの模擬戦も私が引き受けようと思ったんだけどね」 ヴィータ「あー。なのはもここんとこ訓練密度こい~からな。少し休ませねぇと」 フェイト「なのは。部屋に戻ってからもずっとモニターに向かいっぱなしなんだよ。訓練メニュー作ったり、 ビデオで皆の陣形をチェックしたり…」 エリオ「なのはさん。訓練中も、いつもボクたちのことを見ててくれるんですよね」 キャロ「ほんとに。ずっと…」 なのは「私の本気はこんなもんじゃないの」 なのは「こぉらスバル。駄目だよ。そんな危ない軌道!」 スバル「すいません!でも、ちゃんと防ぎますから!」 フェイト「なのはっ!!」 なのは「おかしいな。…二人とも、どうしちゃったのかな?」 「がんばってるのは分かるけど、模擬戦は喧嘩じゃないんだよ。 練習のときだけ言うこと聞いてる振りで、本番でこんな危険な無茶するんなら、練習の意味…ないじゃない」 なのは「ちゃんとさ…。練習どおりやろうよ。ねぇ。私の言ってること…私の訓練…。そんなに間違ってる?」 ティアナ「私は!もう、誰も傷つけたくないから!失くしたくないから!だから…っ、強くなりたいんです!!」 なのは「少し……頭冷やそうか」 なのは「じっとして。よく見てなさい」 なのは「伝えたいことがある。勇気の意味と一番最初に、守るべきもの。 次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS…第9話、たいせつなこと。 皆がいつか、自分の空をゆく日まで…」